作成記
comic『我楽多(がらくた)』 [全]32ページ
下宿先を探し、木崎ビルに迷い込んだ奈緒。気に入ってそのまま入居を決め・・・。[掲載]@NetHome(2008年3月〜2008年8月)
2009年春から夏にかけて作成した月5ページ連載漫画。ネームやラフ描きはほとんど残っていませんが、ストーリー変移をカット絵でまとめました。
テーマは家族回帰、居場所。事件らしいことがなく色恋に転じるでもない、淡々と情感を描いた本作。かえって描くのに苦心しました。
下宿先を探し古びた住宅街に迷い込んだ、女子大生の花村奈緒(22)。黒猫に誘われるまま、道を尋ねに入った古いビルで、家主の木崎宗一郎(34)と出会う。ビルが気に入った奈緒はそのまま入居を決めて、春から二階に住み始める。ビルの一階には木崎の営む古美術店があり、住居兼用で常時一階にいるとの話だった。
だが奈緒は、入居から一度も店舗が開いている所も、木崎の姿を見たこともない。住み心地のよさから気にしなかった奈緒だが、段々と木崎に関心を持つようになる。
そうした中、奈緒は久しぶりに木崎と顔をあわせる。記憶にある姿とまるで違う木崎に驚く奈緒。
それからまもなく、留守中の木崎を男が訪ねて来る。男に立ち退きを勧められ、木崎に対話を望む奈緒。
翌朝、木崎は奈緒の部屋を訪ね、朝食に連れ出す。道々、木崎から話を向けられ、家庭環境を語る奈緒。廃ビルにするつもりだったという木崎の話に、慌てる間もなく昨日の男(瀧澤)を紹介される。
ビル管理について、木崎から事情を聞く奈緒。木崎にとって黒猫が特別な存在と知り、名づけを提案する。季節は移ろい、夏祭りの会場の設置を見守る瀧澤。当日、連れ立って出かける木崎と奈緒。黒猫に手をふる奈緒、先を行く木崎。
ストーリーは、ビルを背景に夜空を見上げる黒猫のコマでしめました。
猫が作中に登場するのは、本作を描く一ヶ月前に飼い猫が他界したことが影響したと思います。ただあることのすばらしさ。そういうことを描きたかった。
描くに際し調べてためになったのは、お盆の馬と牛。描くだけ描いて没にしましたが、迎えは馬で送りは牛の理屈を知ってなるほどと思いました。
情感を淡々と描いた漫画としては『スター・ボール』に類する本作。連載は縦スクロールの1ページ構成でしたが、6ページめから見開きでネームを作るようにしました。線画やコマ割がどう変わったかは、本作の後に描いた『地獄変』をご覧ください。